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Memoria de los libros preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります
星の数は気分なのであてになりません
夏目漱石『三四郎』  ★★☆
三四郎 (岩波文庫)
三四郎 (岩波文庫)
夏目 漱石
 何か消化不良。解説で言われているようなあっさりしたラストは逆に木の実なんだけど、そこに至るまでが結構長かったので割に合わないと感じる。あの全てのエピソードは必要だったのかな? 長さの分だけカタルシスや盛り上がりを欲してしまうのは悪い癖かもしれないけれど。
 大学入学のために九州から上京した三四郎は東京の新しい空気のなかで世界と人生について一つ一つ経験を重ねながら成長してゆく。筋書だけをとり出せば『三四郎』は一見何の変哲もない教養小説と見えるが、卓越した小説の戦略家漱石は一筋縄では行かぬ小説的企みを実はたっぷりと仕掛けているのだ。(Amazon)
| 文学 | 01:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
森鴎外『雁』  ★★★
雁    岩波文庫 緑 5-5
雁 岩波文庫 緑 5-5
森 鴎外
 よかった。お玉の恋心はどうなるの! と最後まで読んでしまった。
 生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたお玉は、高利貸末造の妾となり、上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住んでいる。やがて、散歩の道すがら家の前を通る医学生岡田と会釈を交すようになり……。鴎外の哀感溢れる中篇。(Amazon)
 非常に整っていて読みやすい文章だった。一文一文が。安吾と宮沢賢治を読んだ後だったから尚更(この二人の文章って読んでると何言ってるのかわからなくならない? 全部じゃないけど)。お玉の顔が赤くなる描写などが美しくてあーいいわーと思いながら読んでた。漱石と同時代の人か。漱石は柔らかい感じだけど鴎外はかたいね。超エリートの軍医だったそうで、頷ける。
 んもう時代がいいよね。もし設定を現代にしたら魅力の八割は飛ぶと思うよ(笑)つまりは闇金屋の愛人になった女が美丈夫な東大生に恋心を抱くも彼は留学してしまったのでした、ってことだもんねえ。手が届きそうで届かなかったお玉ですが、それでよかったと思うよ。一度おいしいもの食べたらもう末造に戻る事なんてできないでしょうし。すれ違い万歳。
 上野界隈に親戚がいるので想像しやすかった。無縁坂の話もこのまえ父から聞いたばっかりでタイムリー。
 解説には、視点の変換や何やかやと新しい手法を取り入れたんですよこれでも、とあったけど、時代は変わったんですねえ。目新しさは全く感じず。ミステリ好きだからなあ。視点使ったトリックは日常茶飯寺だし、偶然もなあ……偶然のうずたかく積もれた山じゃないか。ミステリ。
 あと、雁は鴎外の中で最も小説らしい小説だとか。他既読なのは舞姫くらいだけど、それじゃあ私は他の読めないなあ。小説らしい小説が大好きなもので。
 最後の一文が解読できず、僕はお玉の情人になったんか!? と思いましたがどうやら違うようで。自分の馬鹿さを露呈して終わる。
| 文学 | 23:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
夏目漱石『こころ』  ★★★★☆
こころ (岩波文庫)
こころ (岩波文庫)
夏目 漱石
 今更な一冊。高校時代に挫折したんだ確か。年を重ねた今はどうして挫折したんだろ? と思います。面白くてすぐ読み終えちゃった。
 親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。(Amazon)
 まず文章が本当に好み。美しい。ねちっこくなくていいです。石を漱ぐって字がぴったりだよ。こんな文章が書けたら!
 アメリカではゲイ文学とも言われるようですが、ゲイではないだろうよ! そう称するとわびさびみたいな日本的な性質がなくなる気がする(笑)ゲイって言葉のせいか。同性愛って呼ぶとそうでもないもんな。でも同性愛とは思いませんでした。そこがいい。憧憬や尊敬や嫉妬、が行き過ぎてしまった感じ、いいですよねー。私と先生とKの織り成す関係性がたまらんね。
 今になって楽しめるってのは私のオタクスキルが上がったからかもしれない……(遠い目)
| 文学 | 00:07 | comments(2) | trackbacks(0) |
ジェーン・オースティン『自負と偏見』  ★★★★
自負と偏見 (新潮文庫)
自負と偏見 (新潮文庫)
J. オースティン, Jane Austen, 中野 好夫
 去年の夏、英文学専攻の友達が読んでいて面白いと言われたので、今更読んでみた。映画「プライドと偏見」はCMしか見たことないな。フェミニズム的な話かと思いきや、ユーモアのある恋愛娯楽小説だった。自分の愚かさに気付いてはっ、とする話。皮肉のきいた会話がとても面白かった。
 イギリスの田舎町、五人姉妹のベネット家の隣に、青年紳士ビングリーが引越して来る。温和で美しい長女ジェーンと才気溢れる次女エリザベス、そして快活なビングリーとその親友で気難し屋のダーシー。ところが、エリザベスが高慢で鼻持ちならぬ男と考えていたダーシーが、実は誠実で賢明な紳士だと判った時……。二組の恋の行方と日常を鋭い観察眼とユーモアで見事に描写した名作。(Amazon)
 くどくどとした描写が多いし、解説にあるように大事件が起こるわけでもないのに、何か面白い。作者の観察力のなせるわざなのかな。
 ダーシーは実際高慢だよね! あんな手紙もらったらエリザベスじゃなくともはらわた煮えくり返るわ。家族って切っても切れない仲だし、いくら自分が我慢できないと思っていても他人に指摘されると「お前に言われたくない!」って思うものじゃない。近しい分嫌悪感が増殖しやすいけど、リジーのようにちゃんと恥じ入れるのは偉いよ。
 ジェーンとエリザベスの姉妹はかわいくてにこにこするな。特にジェーン。天使様ですか。
 あの結末にはお父さんじゃなくとも吃驚仰天するだろう。お前、あんなに嫌ってたじゃないか! ちょっと唐突な感もあるけど、リジー曰く少しずつ認識を改めていったみたいなので、お幸せに、ということで。
 にしても貴族って優雅だな! ベネット家は裕福じゃないらしいけど、これで!? 毎日お父さん以外仕事せずに暮らしているじゃない! 上を見ればキリがないとは言え。日本の貴族も歌送りあってるばっかだったけどさ。貴族ってすごいね。
| 文学 | 17:31 | comments(0) | trackbacks(0) |
トルストイ『アンナ・カレーニナ(上)』  ★★★
アンナ・カレーニナ (上巻)
アンナ・カレーニナ (上巻)
トルストイ, 木村 浩
 浮気をするアンナの話ってことしか知らなかったので、あばずれ女なアンナを想像していたんだけど全く違った。魅力的な淑女じゃないか(途中まで)。旅行中のホステルにあって、読むのが大変そうなロシア文学は暇つぶしにぴったりじゃないか! と持ち出したんでした。
 表題でもある主人公アンナと、ヴロンスキーの激しい愛。もう一人の主人公リョーヴィンと、キチイの穏やかな愛の二つが主軸である。(Wikipedia)
 読み終えたのがかれこれ一ヶ月前なのでうろ覚えだけど、翻訳ものの描写は微に入り細をうがつ感じだよね。心情をこれでもかー! と繰り返し丹念に描いてくれる。特に、目をそむけている自分の欠点に気付くあたりは、そうそう、と恥ずかしくなるほど頷いてしまった。よくぞあのぐるぐるとした思いを言語化できるものだね! オースティン『高慢と偏見』もそうだった。
 思っていたより読みやすかったし四人の行く末が気になるので、続きを読もうかな。ロシア文学の金字塔だしね。常識だよね。
| 文学 | 17:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
島崎藤村『破戒』  ★★★★
破戒 (岩波文庫)
破戒 (岩波文庫)
島崎 藤村
「下等人種?」
「卑しい根性を持って、いやにひがんだようなことばかり言うもの、下等人種じゃなくて君、なんだろう。へたに社会へでしゃばろうなんて、そんな思想を起こすのは、第一大間違いさ。獣皮いじりでもして、神妙に引っ込んでるのが、ちょうどあの先生なぞには適当しているんだ。」
「はゝゝゝゝ。してみると、勝野君なぞは開化した高尚な人間で、猪子先生の方は野蛮な下等な人種だと言うのだね。はゝゝゝゝ。僕は今まで、君もあの先生も、同じ人間だとばかり思っていた。」
「よせ。よせ。」と銀之助はしかるようにして、「そんな議論をしたって、つまらんじゃないか。」

 最初の方は、銀之助と丑松にんん? と思っていたけど(笑)、読み進めていくうちにそれどころじゃなくなった。不謹慎な人間ですみません。
 旧社会において極度に卑しめられた部落民出身の小学教員丑松が父の戒めを破り、公衆の前に自らの素姓を告白するまでの激しい苦悩の過程を描く。四民平等は名目だけの明治文明に対する鋭い批判を含み、丑松の苦悩を通し日本の悲劇をえぐり出したこの作品こそ、真に近代日本文学史上最高の記念碑といえよう。(表紙)
 周りの人間が丑松をいちびっているあたりは、読んでいてどうしようもなく焦った。ああバレてしまう。もう隠しておけない。息苦しい。丑松の側に立つ人間でさえ、穢多は卑しいといって憚らない(真実を知らされていないからかもしれないけど)。
 丑松が告白した後の銀之助とお志保の行動には思わず泣いてしまった。あと生徒たち。新世代は徐々に寛になっていくんですね。丑松はいい先生だったんだろうね。
 解説には、本書への批判として、結局丑松は逃げたのであって何の解決にもなっていないとか、あの連太郎すらも穢多を卑しいものとしていたとか書いてあった。でも、生まれたときから自分は卑しいんだと思い知らされてきたら、なかなかそこから脱却できないんじゃないかなあ。それが当たり前になっちゃって。
 日本の階層社会は壊れたわけですが、100年以上経った今も部落は残っていて、差別ってなくならないのかねえと思わずにはおれません。日本国内だけじゃないけど。平和と平等って達成されないから素晴らしいのかな。
| 文学 | 15:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
川端康成『伊豆の踊子』  ★★★★
伊豆の踊子・禽獣 (角川文庫)
川端 康成
 この美しく光る黒眼がちの大きい眼は踊子のいちばん美しい持ちものだった。二重瞼の線が言いようなく綺麗だった。それから彼女は花のように笑うのだった。花のように笑うと言う言葉が彼女にはほんとうだった。(伊豆の踊子)

 親心、ほんとうに親心であった。この豊かな心持こそ、後々までも私にあなたたちを守らせた、また同時に私自身を守らせた、たった一つの美しいものであったのだ。その私たちの心持を感じたかのように、あなたは私に寄り添ってきた、そのあなたを見ると、あなたをしあわせにしてあげたい思いだけが、私をしあわせにするというような、そんなしみじみとした暖かさが静かに湧いて来た。(むすめごころ)

 読んだ直後はいい……! と放心してたんだけど、再読してみるとそこまででもなかった(笑)一つ一つが短いしね。やっぱ初読は特別なんだなあ。「伊豆の踊子」にはしみじみとした確かに抒情を感じましたけど。初読時は特に。『雪国』を途中で放棄した私。今なら内容云々以上に文体に注目しているので読めそうな気がする。
 「伊豆の踊子」は著者初期の代表作。主人公の二十歳になる旧制高校生は孤独な心を抱いて、伊豆へ一人旅に出る。そこで旅芸人の一行に出会い、十四歳の薫という踊り子に惹かれる。踊子の若さと純粋さが主人公の歪んだ心をいつしかあたたかくときほぐしていく過程に、青春の感傷と慕情が融けあった美しい抒情が漂う作品である。(裏表紙)
 青い海黒い海:
 驢馬に乗る妻:彼と、妻・綾子、豊子の姉・豊子の三角関係。
 禽獣:彼はたくさんの動物を飼っている。書斎の鳥は三十羽に達することもある。
 慰霊歌:幽霊の話。
 二十歳:
 むすめごころ:咲子が親友の静子にあてて出した手紙。咲子と血のつながりのある武を、静子とつがわせようとする咲子。
 父母:よくわからなかった。読み直す元気もなかった。私はストーリー性を前面に押し出してもらわないと楽しめないのかな。
 あらすじ書くの放棄します。無理だった。
 表題作と「驢馬に乗る妻」「むすめごころ」が好き。「伊豆の踊子」は時代でいうとどのへんなのかな。明治って……そんな時代だっけ?笑 「むすめごころ」にはどうも百合萌えのようなものを感じてしまうんだが……これは私の読み方が悪いのか……。いちばん気に入った話だったな。ほんのり同性愛が漂っているの大好物。さじ加減が絶妙。
 友人が「川端って恋愛小説のイメージが強いから読んでない」と言ってたけど、事実恋愛ものが多いのかな。でもそんなガツガツした恋愛ではないのかも? このくらいだったら好みの範疇なんだけど。あと母性的ななにか。
 解説にあった、相部屋の清野くんとの思い出日記には色々吹き出しました。思わず友達にメールを送ってしまった。文豪って同性愛と自殺がデフォルトなのか?笑 あと「禽獣」、夏目の「文鳥」と被るんですけど、皆さん鳥を殺しすぎではありませんか? 随筆なのか小説なのかわからんが。
 それよりも、動物の生命や生態をおもちゃにして、一つの理想の鋳型を目標と定め、人工的に、畸形的に育てている方が、悲しい純潔であり、神のような爽やかさがあると思うのだ。良種へ良種へと狂奔する、動物虐待的な愛愛護者たちを、彼のこの天地の、また人間の悲劇的な象徴として、冷笑を浴びせながら許している。(禽獣)
| 文学 | 22:25 | comments(0) | trackbacks(0) |
バートン版『千夜一夜物語 1』  ★★★☆
千夜一夜物語〈第1〉―バートン版 (1966年)
大場 正史
「栄えある神、偉大な神、アラーのほかに主権なく、権力なし。アラーの力をかりて、女の邪心と手管をのがれよう。まことに、アラーの力におよぶものとてない。われわれよりずっと力のある魔神を、あの不思議な女がどんなふうに手玉にとったか考えてもごらん。われわれにふりかかった不幸よりもっと大きな不幸に魔神はあっているのだ。われわれの気持ちも大いにおさまったわけさ。さあ、郷里へ、都へ帰ろう。こんごは女どもと決して結婚しないようにしようではないか。そのうち、女どもには、われわれのやり方を見せてやるぞ」

 授業の発表に使おうと思って一巻だけは全て読み、他はつまみ食いした。俗に言うアラビアンナイトってやつですね。王様が続きを知りたくてシャーラザッドを殺さずにいるのも頷けるくらい、話はなかなか面白い。物語は複雑な入れ子状態で、一ページに三回くらいアラーを褒め称えて、あらゆる場面に読む気になれない詩が出てきます。アラビア文化に触れたことってあまりなかったので、いい機会だった。
 挿絵がすごくエロティックで美しいので見るべきだと思います。
| 文学 | 16:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
夏目漱石『夢十夜』  ★★★★☆
夢十夜 他二篇
夢十夜 他二篇
夏目 漱石
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
 自分は黙って首肯た。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切た声でいった。(夢十夜)

 昔し美しい女を知っていた。この女が机に凭れて何か考えている所を、後から、そっと行って、紫の帯上げの房になった先を、長く垂らして、頸筋の細いあたりを、上から撫で廻したら、女はものう気に後を向いた。その時女の眉は心持八の字に寄っていた。それで眼尻と口元には笑が萌していた。同時に恰好の好い頸を肩まですくめていた。文鳥が自分を見た時、自分はふとこの女の事を思い出した。(文鳥)

 妻が出て行ったらあとが急に静かになった。全くの雪の夜である。泣く子は幸いに寝たらしい。熱い蕎麦湯を啜りながら、あかるい洋燈の下で、継ぎ立ての切炭のぱちぱち鳴る音に耳を傾けていると、赤い火気が、囲われた灰の中で仄に揺れている。時々薄青い焔が炭の股から出る。自分はこの火の色に、始めて一日の暖味を覚えた。そうして次第に白くなる灰の表を五分ほど見守っていた。(永日小品・火鉢)

 夏目漱石の本読むの三冊目くらいだけど、こんなに美しい文章を書いていること知らなかった。和語が多いのか、柔らかい響きで(実際に音読してもきれいなんだろう)、その響きに乗せられていると内容が頭を上滑りする。文章の一文一文は簡単で、とてもわかりやすい。三島みたいに豪華なんじゃなくて、きらきらしてる。すごくいい。私の目は節穴だったのか。文章をこんなにも味わえるのは、内容がエンターテインメント的な、ぐいぐい読ませるものではないからだ。
 夢十夜:「こんな夢を見た」ではじまる夢の話が十夜分。
 文鳥:三重吉が文鳥を飼いなさいというので金を渡すと、しばらく経ってから立派な籠と美しい文鳥を持ってきた。
 永日小品:元日・蛇・泥棒・柿・火鉢・下宿・過去の匂い・猫の墓・温かい夢・印象・人間・山鳥・モナリサ・火事・霧・懸物・紀元節・儲口・行列・昔・声・金・心・変化・クレイグ先生
 いいのは文章だけじゃない。中でも夢十夜の一夜目には完全にノックアウトだ。これはよすぎる。これは泣ける。でも何がなんだかよくわからない話も結構ある。理不尽というか。文鳥も割と理不尽というかかわいそうだけど、好きだった。あと解説にもあったけど永日小品の火鉢、実際に火鉢の前にいるような感覚。夏に読んだのに雪の日の静けさを感じるし、手足の先が冷え切る。
 漱石がこんなに愛されるわけがようやくわかってきた。原稿用紙に書いてたんだもんなあ、漢字も全て。自分の怠惰さがわかるわ。紙に書けばもっと考えるようになるかもね。逆立ちしたってこんな文章書けないけどね。どの描写も美しいので、青空文庫ででも読んでみることをお薦めします。本の方が気分は断然出るけど。
 とりあえず『こころ』からはじめよう、本好きな女性オタクにはそういう意味でも欠かせないので(笑)
| 文学 | 16:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
フランツ・カフカ『変身』  ★★☆
変身
フランツ カフカ, Franz Kafka, 中井 正文
「あれがグレゴールだという考え方を、まずおすてにならなくちゃいけないのよ。あたしたちが長い間そう信じてきたことが、あたしたちの不幸の原因だったんだわ。あれが、いったいどうして、グレゴールなんかであるもんですか。もし本当にグレゴールだったら、人間があんな動物といっしょに暮らしわけにはいかないことくらい、とっくの昔にわかってくれて、自分のほうからどこかへ出ていってくれるでしょうよ。そうしたら兄さんがいなくなってしまうわけですけど、あたしたちはおかげで安心して生活できるし、いつまでも兄さんのことを尊敬しながら思い出せるというもんですわ」(変身)

『あなたのおっしゃることなんか、みんな、退屈で、理解しにくいことばかりだわ。だから、まだほんとうじゃないのね。あなた、なぜ、あたしをいつもかわいいお嬢さんなんてお呼びになるのかしら。真実って、ずいぶん努力がいるんでしょう。それだからよ、あなたなんか、そういうものとはまだまだ縁がないんだと思うの』(ある戦いの描写)

 ある朝起きてみると自分が虫に変わっているのを発見した、という有名な小説。カフカってユダヤ人だったのね。
 平凡なセールスマンのグレゴール・ザムザは気がかりな夢からさめたある朝、一匹の巨大な褐色の毒虫と変った自分を発見する。第一次大戦後のヨーロッパの混乱時代ことにドイツの精神的危機の中から生れ出たカフカの文学は、徹底的なリアリズムの手法によって純粋に象徴的なものを表現した二十世紀の人類の苦悩のしるしでもある。(Amazon)
 不条理だな! と思いつつ苦しくてたまらなかった。まったく笑えませんよ。変身したグレゴールでも最初は喋れるのに、段々ただの虫になっていく。でも心はある。あるのか? 虫になってしまったこと自体にはすぐに慣れてしまうんだね、ハウルの動く城でおばあさんになったソフィーみたいに。私だったらあんな一瞬で適応できないぞ。
 リアリズムと言われてもこれは何を表現してるんだろうとAmazonのレビューを読んでみたら介護や福祉といった言葉が出てきました。それは……痛いほどわかるな。現代人の不安と恐怖、ねえ。結局グレゴールは一人で死んでしまうんだけど、グレゴールに感情移入している読者としては鬱になるよりほかにありません。
「ある戦いの描写」は内容がさっぱり掴めなかったので誰かに解説を頼みたいところ。話が繋がってることもわかんなかったくらいだよ。
| 文学 | 16:15 | comments(0) | trackbacks(0) |